エセ・ストラテジストは、奔走する
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「茅人、お待たせ。」
「うん。」
母を見送って、ホームに繋がる階段を降りたところで声をかけたら、目尻を微かに下げた茅人が自然に私の手を取った。
その熱を感じて頬を緩ませたら「どうした?」と優しく声をかけられる。
この人は、私のために
今までどれだけ頑張ってくれていたのだろう。
今日だって知らなかったことばかりだった。
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『まああんたって、結局ファザコンなのかもね。』
『ええ?聞き捨てならないんだけど。』
『だってお父さんと茅人君、似てるじゃない。
愛情深いくせに、伝えるのが下手。』
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「…茅人は、私なんかより
いつも作戦を立てるの、上手だけど。」
「……別にそんなことも無いけど。」
「でも、心臓に悪いから、もうやめてね。
これからは私も一緒に、頑張らせて欲しいし。」
貴方の愛情を、取りこぼすことなく
全て大事にしたい。
そういう気持ちで告げたら、階段の脇で人の往来が一瞬途絶えたそのタイミングを逃さず、軽く唇を重ねて、至近距離で「考えとく」と珍しく悪戯に笑った。
小話2「ストラテジスト達の決着」
不器用な人間達の作戦の種明かし、
漸く全て終了。
「…不意打ちはやめて」
我慢できず唇に触れた俺に、
辿々しい千歳の抵抗はあまり効かない。
俺は彼女からすると、
どうやら作戦を立てて動くのが上手いらしい。
実は裏で必死で、焦って、戸惑って、
いつも千歳がどうしたら笑ってくれるか、
それだけを考えて
ただ奔走している格好悪い人間だけど。
折角なのでそれは黙っておこうと決めて
もう一度、キスを落とした。
fin.


