エセ・ストラテジストは、奔走する



亜子ちゃんは私の従兄弟で、小さい頃から女王様の風格が抜群だった。


今は、東京で大手のオフィス家具メーカーに就職してバリバリ働いている。

毒舌だけど美しい彼女は、私がLINEでお願いしたいことがあると言うと、結局は二つ返事で来てくれる優しいところも勿論ある。


「しかもそれって、両親とかを会わせて無言のプレッシャー与えるやつなんじゃないの?」

「でもほら、お父さんたちは東京にそんな簡単に来られないから…」

「だからって代わりの親戚あてがうってなんなのよ。
話すり替わってるしプレッシャーになるわけ無いでしょうが、あんた天然?」

「……」

ズバズバ言うところは、
やはり昔から変わっていない。


「…彼氏は元々、東京の人なんでしょ?
それであんたもこっちに来たし、大学からなら付き合いも長いし、当然そういう話込みで千歳も上京したんだと思ってたんだけど。」


「……私が。」

「うん?」

「____私が、“勝手に“、来たの。」


落とした言葉は、
あまりに寂しく空気を震わせてしまった。


亜子ちゃんが連れてきてくれたスペインバルはとてもお洒落で、料理も美味しい。

だけど、キノコのアヒージョの煮立ちは、運ばれてきた時に比べてその勢いをどんどん失っている。

目の前の亜子ちゃんは、ワイングラス片手にじ、と私の全てを見透かすような眼差しを向けていて思わず逸らしたくなった。



「………千歳。」

__あんた。この作戦自体、本当に乗り気なの?

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