エセ・ストラテジストは、奔走する



恋人として、凄く幸せな時間だと思う。

だけど、私の中の不安は増幅されていくばかりで、滑稽だ、ともう1人の自分が嘲笑っているような気がした。

肌を重ねなければ、求めてもらえなければ。

本当の意味で安心を得ることができなくなっている私は、とっくにどうかしているし、歪んでいる。

__茅人。

私のこと、まだ、どのくらい必要?___





依然鳴り響いているスマホを持って、私の背中に回されていた腕からそっと離れて、玄関の方へ向かった。

狭い部屋だから、ここまで来ないと茅人を起こす可能性がある。



【着信:鈴谷 理世】

…嫌な予感が、再来している。

無視しようかと思考が過ったけど、そうするとまた
あの変なグループ名のLINEで荒らされそうだからと
渋々着信ボタンを押した。


玄関先で蹲み込んで「はい」と答えると、

“お前、何昨日無視してんだよ。“

「は?」

“LINE!作戦練る前に消えただろ。“

「あー、ごめん。忘れてた。」

“お前、やる気あんのか。“


だって私達の作戦はあまりに雑が過ぎる。
はあ、と溜息を漏らしたら向こうも同じように深く息を吐き出した。
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