エセ・ストラテジストは、奔走する
“そんなことだろうと思ったから、俺はもう先に動いてた。“
「は?」
“荷物、美都に住所聞いて送っといた。“
「…荷物?」
“午前配達指定したから、そろそろ届くんじゃね。
ポスト投函かもだけど。マジで感謝しろ。“
「話が読めないんだけど。」
“何お前、昨日の俺のLINE最後まで読んでねーの?"
「読んでない。」
“読め。“
茅人が突然やってきて、それどころではなかった。
ハテナを浮かべつつ、理世との通話はそのままに昨日のLINEを読み返す。
《あ、気になる?じゃあもう発表するわ。》
…作戦があると言った男のこのメッセージまでは、覚えている。
その後も理世が1人で喋り続けているところは全く見ていなかった。この男、仕事が忙しいと思ってたけど、ちゃんと働いてるのだろうか。
《最終手段。
例の雑誌を部屋に忍ばせて、結婚を意識させる》
《ということで、ネットで買って送っといたから。どんだけ優しいんだ俺は。届いたら、なんか部屋に自然と置いとけよ。》
《おい、無視すんな。》
「……は?」
“トーク読んだ?“
「……例の雑誌、って何。」
“決まってんだろ。
「結婚するならゼクシィ!」だろうが。“
「馬鹿じゃないの!?」
この頭脳《ブレイン》、本当にすごく馬鹿だった!!
焦りが先行して思ったより大きな声が出て、咄嗟に口を手で覆う。
“誰が馬鹿だよ。“
「もっとナチュラルな作戦あるでしょ!?」
“ねーよ。“
理世の声が、急に冷たく突き放すように聞こえて思わず体が止まった。