エセ・ストラテジストは、奔走する
◽︎

「ただいま!!」

玄関先で大きな声でそう言ったら、
びっくりした顔で母が迎えてくれた。

「何あんた、トイレットペーパーは?」

「え、そのおつかいは本当だったの?」

「当たり前でしょうが。道草だけして買ってこなかったの?あんたよく東京で働けてるわね。」

通常運転の母がげんなりした顔で再び奥に戻ろうとするから、私はそれを呼び止めた。

「……お母さん、私、今から東京戻る。」

「…ほんと慌ただしいわね、何なの。」

「…どうなるか、分かんないけど。
ちゃんと“答え“は自分で、出してくる。」

そう言ったら、母は「そう」と笑った。


「……軍資金のことも、ちゃんとするから。」

「私、返済者の充てがあるんだけど。」

「え?」


母の返事が予想外でそう聞き返すと、溜息を吐いて。

「…あんた、私が“娘1人"でのぼせ上がった恋愛に、
お金まで出して協力すると思う?」

「……、」


「___茅人君が、ちゃんと私とお父さんに
挨拶に来てくれたからに決まってるでしょ。」

< 52 / 119 >

この作品をシェア

pagetop