エセ・ストラテジストは、奔走する



【理世さんがあなたと美都さんを
「プロポーズ大作戦(笑)」グループに
招待しました。】


「…ちょっと。」

「何。」

「何これ。」

「名前のままだろ、早くグループ入れよ。」

「3人のグループLINEなら前からあるじゃん。」

「ばかお前、こういうのは形から入らないと気合も入んねえだろうが。」

「……」

招待されたそのグループは、名前から本当にふざけてる。
それなのに、溜息を漏らしながらも「参加」を押してしまう私は、なんなの。



「千歳、ストラテジストになれ。」

「…はい?」

「ストラテジーってビジネス用語でも聞くだろ。
"策略、作戦。"

ストラテジストは「金融のプロ」のことだけど、元々は“作戦を考える者“って意味だから。」


「……はあ…」

証券マンらしい命名を受けても、何もピンとはこない。

「プロポーズされるよう、
お前がいろんな作戦使って仕向けるんだよ。」

「……本気で言ってんの?」

「俺らも協力する。」

「理世、あんた楽しんでるでしょ。」

「イヤ?」


嘘、下手か。

溜息を漏らしてもう一度スマホを見つめると美都もちゃっかりグループに参加していて。

個人LINEの方で

《理世はお調子者だけど。
私たち、
千歳ちゃんの幸せは絶対誰よりも願ってるよ。》

とメッセージが届いていた。


…そういう言い方はずるいなあ、
そう呟いたら美都は綺麗な顔を破顔させた。






作戦0「ストラテジスト誕生?」


私は絶対的に
そういう“作戦“の実行とか、向いてない。


そして同時に、この作戦に孕む"怖さ"には、
まだ気がつかないフリをした。







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