エセ・ストラテジストは、奔走する
____違和感は、最初からあった。
きっと最初は興味なんかこれっぽっちも無かった千歳が、急に東京での進路を口にした。
その後も物件を探すのだって、就活することだって。
"無理をさせている"
その自覚は、充分過ぎるくらいに芽生えていた。
でも。
まだ社会人になれるかも分からない、
この現実の中で。
千歳が、”俺との未来”を想像して
一緒にいたいと思ってくれたことが、
嬉しくて、もう、手放せないと思ったから。
「…今日は、なんのご用でしょうか。」
前回は全てが正論過ぎて、彼女に何も言葉を伝えることが出来なかった。
再び千歳の家を訪れた俺に、彼女は厳しい声色でそう問う。
「"信頼"は、これからを見てもらえませんか。」
「………え?」
「あくまで、娘さんを応援したい、
その気持ちで、援助していただけませんか。」
千歳と同じ、大きな瞳がこれでもかというくらい見開かれている。
まだ学生のガキが何言ってんだって、
思われるのは百も承知だ。
「すみません。お嬢さんの選択が、もしかしたら無理をしてるんじゃ無いかって俺はどこかで分かってました。
でも、一緒に東京に来てくれるって分かって、俺は純粋に嬉しかった。そばに居たいって、自分の気持ちを優先して、止めなかった。」
「……本気なの。」
「苦しい生活を千歳さんにも強いるんだから、そのお金は俺が必ず働いて返します。
それが、ちゃんとご用意できる時が来たら。
____結婚のご挨拶に、伺います。」
だけど。
俺はもう、此処に千歳との恋を置いていけない。
千歳のお父さんは、その後何度か家を訪ねても顔を見せてはくれなかったけど。
結局最後は、東京行きを渋々許してくれたと千歳から聞いて、心の中で感謝をした。