エセ・ストラテジストは、奔走する





”あいつ、怖いって言ったんですよ。”


___あのね、私、ずっとただ、しがみついてるの。

拒絶されるの、どんなに覚悟しても、怖い__


「……、」


今日、この玄関先で蹲っていた小柄で華奢な姿を思い出すだけで、胸の痛みが止まりそうには無い。

千歳はずっと、どんな気持ちで過ごしていたのか。




"…でもそれ、是枝さんもじゃ無いですか?

時間を重ねれば重ねるほど、
時々めちゃくちゃ怖い。

付き合いの長さがつくる「相手のことはなんでも分かる」とかいう認識は、たまに呪いにさえ思えます。

その呪いに逃げてたら
言葉なんか、どんどんうまく繋がらなくなる。"


この人自身も、千歳の親友である彼女と
相当付き合いが長い筈だ。

だからこそ、心に刺さって、響き過ぎていた。




相手の考えてることは、全て分かる。
勿論、こちらの気持ちも全て伝わっている。

“長く一緒に居る“ことは、
そういうことだと、思っていたけど。


俺はずっと、千歳の本心を知るのが怖かった。




”是枝さん。

でもそれは、その「怖さ」は。

あいつのことを
「手放しても良い」になり得ますか?”



鈴谷さんの言葉が再び自分へと浸透した瞬間、視界が情けなく滲んで、それを悟られないようにスマホを握るのと別の、震える手で目元を覆った。




"あの、入荷したらご連絡もできます!"

"是枝くん。私と、付き合ってもらえませんか。"

"私は家から通えるから、だけだったけど
それで茅人に会えて、神様に感謝しないとなあ。"



____"茅人。私も、東京での就職を考えてる。"



始まりからずっと。

いつも、

大切なことは何もかも、言わせてばかりだ。
 


千歳は、一度だって俺に不満を言わない。

まるで無償のように思えた愛は、
報いを求めたりしない。




俺は、伝えるのが得意じゃない。


でも、だからなんだ。

__それは、伝えるのを怠って良い理由にはならない。
 
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