エセ・ストラテジストは、奔走する
鈴谷さんは、彼女さんと連絡を取りつつ
また何か分かったら知らせる、と言ってくれた。
…でも、それをジッと待ってるばかりでは居られない。
手あたり次第、思いつく場所へ行ってみたけど、
そんなドラマみたいにすぐに見つけられる筈もない。
相変わらずスマホは繋がらず、
少しずつ、辺りの景色は夕方に差し掛かっている。
本当はずっと、”もしかしたら”を、抱えていた。
千歳が出て行った時から、”もしかして”、____
そう思った瞬間、スマホがポケットの中で震えて
着信が知らされる。
鈴谷さんだろうか。
取り出してすぐに画面を確認し、
思わぬ名前に一瞬、身体が止まった。
”…茅人君。”
「……ご無沙汰しています。」
聞こえた声は、3年前と何も変わらない。
”千歳が急にさっき
ぼろっぼろの顔で、帰ってきました。”
「……すいません。」
嗚呼、やっぱり。
千歳はあの街に帰っていた。
"もしかしたら"
そう何度か頭を掠めた考えは、当たっていた。
千歳を傷つけた俺は、
この人に何をどう説明すれば良いのか。
情けなさで言葉が詰まったのと同じタイミングで、
もう一度「茅人君。」と名前を呼ばれる。
その穏やかな声色が、やけに千歳と重なった。
”茅人君。この3年間、ありがとう。"
「……え?」
"大変だったでしょう。
社会人になって、生活に慣れるのさえしんどい中で。
茅人君には、他の人なら
抱えなくて済んだものを抱えさせてしまった。”
思いもよらない言葉に、スマホを耳に当てたまま、
瞬きだけが増える。
脈が速くなるのと並行するように神経が研ぎ澄まされていって、周りの音がぼやけていく。
”…前に私、貴方を信頼できないって言った。
私はね、お金のことは本当はどうでもよくて、
「あの子を大事にする」、
そういう気概が娘の好きな人に備わっているのか、
それを知りたかった。
……だけど私達の言葉のせいでより沢山、貴方を長い間、頑張らせ過ぎてしまって本当にごめんなさい。"
なんで、この人が俺に謝るのか。
電話越しなんだから意味はないのに、
言葉が浮かんでこなくて、ただ首を横に振った。
"‥‥もう、充分すぎるくらい。
この3年間、茅人君の誠実な気持ちは、
”私達には”伝わってる。
でもうちの娘、バカなのよ。
だから、一度で良いから
ちゃんと言葉で伝えてやってくれる?”
呆れたような、どこか慈しむようなそんな声での提案に、また少し視界が滲んで、直ぐ側で沈んでいく西日がやけに染みた。