それは、魔法みたいに


「……私、料理ができないの。だから家庭には不向きって言われたことがある」

「結婚するために奥さんが料理上手ってことが必須なの?」

「うーん……そういう男の人は多いんじゃないかな」

少なくとも私が以前付き合った男の人はそういう相手だった。

まぶたに何かが塗られていく。おそらくはアイシャドウだ。不思議と彼に触れられて嫌ではないのは何故だろう。


「加藤さん、目を開けて」

合図をされて、まぶたを持ち上げるとすぐ目の前に御上千香の顔があった。相変わらずの美しい顔に見惚れてしまう。



「俺は料理できるから、料理担当できるよ」

そんな宣言をされて、目をまん丸くする。

……やっぱり彼はモテる男だなとこんなときに感じてしまう。


「朝食には美味しいコーヒーもつけるよ」

「御上の奥さんになる人は幸せかもね」

「うん、幸せにするつもりだよ」

まるで自分に言われているみたいで、照れくさくなってくる。
付き合っているわけでもお互いに気があるわけでもないのに妙な感じだ。


「だから……まあ、続きはそのうち」

「続き?」

「口、閉じて」

最後に唇にブラシで口紅を塗られていく。先ほどよりも、緊張が増している気がした。



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