それは、魔法みたいに
「できたよ」
御上千香に手鏡を向けられ、映った自分の顔を見て衝撃を受ける。
「え、えっ?」
今まで見てきた自分の中で、たぶん今が一番華やかで綺麗だ。こんなことを自分で思ってしまうのは、微妙な気持ちになるけれど、間違いない。
成人式の振袖を着たあの時よりも、友人の結婚式でパーティードレスを着た時よりも、普段の会社用の服を着ているはずなのに、今の私はすごく華やかで驚いてしまう。
「どう?」
「び……びっくりして、言葉が、」
「似合ってるよ。すごく綺麗」
誰かにこんなふうに褒めてもらえたのは初めてかもしれない。仕事ができて褒められることはあっても、見た目で褒められることなんてなかった。
メイクってすごい。ちょっとしたことでこんなにも変わるのだ。まるで魔法みたい。
「あり、がとう」
私はそんな魔法の道具を売る仕事をしているのだと思うと、胸が熱くなってくる。
嬉しさが抑えきれずに微笑むと、御上千香が無邪気に笑った。
「その顔が見れてよかった」
御上千香に、こんな特技があったなんて知らなかった。そして私も含め、会社の人たちは彼のことを今まできちんと知ろうとしてこなかったのだろう。