それは、魔法みたいに



翌週の月曜日、私は御上千香に教わったメイクで出社した。ほんの少し私を見る周囲の目が違っているように見える。

メイクを変えるだけで、こんなにも気分が上がるものだとは知らなかった。

朝の挨拶をして、御上千香がこっそりと「似合ってる」と告げてくる。こういう内緒話はなんだかくすぐったい。


……それともう一つ、片付けなければならないことがある。


「部長、これは御上さんが作った資料です」

金曜日に作成した資料を部長に提出すると、部長は中身を見て不思議そうにする。


「これって少し前に提出されたよね」

「ええ、宇崎さんが提出したものなのですが、金曜日に御上さんが宇崎さんに作るように指示を出されたようでして」

意味がわかったらしく部長が目を細めて、デスクに座っている宇崎さんに視線を向けた。


「あ、いや、俺は! 練習にと思って!」

立ち上がり弁解をし始める宇崎さんに、にっこりと微笑む。


「面倒見がいいですよね、宇崎さんって。指導係でもないのに、面倒を見てくださるなんてすごいです」

「あ、え」

「これからもご指導よろしくお願いしますね」

メイクを変えたからか営業スマイルにも自信を持てる。血の気がひいていく様子の宇崎さんを見つめながら、笑みをすっと消していく。


「ああでも、彼に仕事を振る場合は部長か、指導係の私を通してくださいね?」

勝手なことするなよと釘を刺すと、宇崎さんは「すみません」と呟いて力なく自分の席に座った。





< 15 / 16 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop