望まない結婚なので、3年以内に離婚しましょう。


「欲しい物はない」
「ではそれは私が自分で買いますね」

「……食べたい物ならある」
「えっ?」

「今日の夜に食べたい物だ。それでいいだろう」
「わかりました。そのお店はここから近いですか?」

「違う、店じゃない」
「はい?」


 てっきり食べたい料理のある店に行きたくて、そこを奢れという意味だと思っていたけれど……どうやら違うらしい。


「お前の作ったやつだ」
「え、私の料理でいいんですか?」

「さっきお前が欲しいと言った鍋を買ったせいで、鍋の気分なんだ」


 そんな、鍋の気分を私のせいにしないで欲しい。

 けれど郁也さんがそう言うなら……いや、彼にに買ってもらったものに比べれば見合わない気がする。


「別に鍋なのはいいですけど……食べたい物なんていつでも言ってくれれば」

「顔を合わせる時間がほとんどないのにいつ言えると?」

「それは……」
「今ぐらいしか言う機会がないからな」


 郁也さんはそれだけ言い残し、レジへと向かってしまった。
 これ以上何を言っても無駄な気がして、ここは彼に買ってもらうことにした。

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