イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~

癖のある友人

「霊感ねぇ」
周りに人がいないからだろうか、つい口を出た。

遥だって子供の頃から感がよくて、行動の先を読んでしまう傾向のあることは周りから気持ち悪がられてきた。
自分では無意識でやっているからどうすることもできないが、周りには異質に見えるんだと気づいてもいたし、だからこそいろんな人間がいるんだと理解している。
でもなあ・・・
さすがに、「私霊感があるの」と言われるとは思ってもいなかった。
そもそも、この世に霊感なんて非現実的なものが存在するとは思っていない。
いつもの遥なら、「気のせいだ」と一蹴しただろう。
でも、先日詐欺師を怪しいと見抜いた萌夏を知っているから笑い飛ばすことはできなかった。

「しかしなあ・・・」

いきなり「オーラ」がどうのこうの言われても、頭が追い付かない。


トントン。

「お弁当なんて、珍しいわね」
普段はあまり声をかけてくることのない礼がお茶を入れて現れた。

「そうか?」

いつもは外食か雪丸の買ってきた弁当で済ませることの多い昼食。
こんな風に弁当を持ってきたのは初めてだ。

「萌夏ちゃんも一緒に食べればいいのにねえ」
「うるさい」

そんなことをすれば萌夏が働きにくくなるだけだと、遥にだってわかっている。

「それにしてもすごい品数」

昨日から体調を崩して食欲のない遥のために、いろいろなものを詰め込んだおかずと数種類のおにぎり。少しでもいいから食事をしてほしいとの萌夏の気づかいだ。

「お料理上手ないい子ね」

お茶を置いたらさっさと出ていけばいいのに、礼は立ち去る様子がない。

「弁当が食いたいのか?」
礼の方に差し出してみる。

どう見ても一人分の量じゃないのはわかっているから、残すくらいならその方がいい。

「バカね、萌夏ちゃんが遥のために作ったものをいただけるわけないでしょう」
「バカって・・・」

まったく、上司を上司とも思っていない奴だ。
まあ年上だし、10代のころからの友人だから仕方がないとも思うが、

「で、最近どうなんだ?」
「え?」
礼の困った顔。
< 133 / 219 >

この作品をシェア

pagetop