イノセント ~意地悪御曹司と意固地な彼女の恋の行方~
しばらく放心状態のまま、萌夏は立ち尽くした。

「萌夏ちゃん」
ちょうどその時、礼さんが戻ってきた。

「礼さん、あの・・・」
聞きたいことはたくさんあるのに、すぐに言葉にならない。

「ちょっと出ようか」

今戻ってきたばかりの礼さんはもう一度オフィスを出ていき、萌夏もそれに続いた。



「驚いたでしょ?」

廊下の先の休憩スペースまで来て、自販機のコーヒーを2つ買った礼さんが1つを萌夏に差し出す。

「驚きました。一体何があったんですか?」

「朝来たら、金曜の飲み会に参加したメンバーが雪丸に呼ばれたの。とはいえ、そうさせたのは遥だと思うけれどね」
礼さんはなんだか楽しそうに、萌夏を見ている。

「私が、原因ですか?」
「まあ、そうなるかな」

やっぱり。

「でも、雪丸が言うこともあながち間違いではないと思うのよ。入ったばかりの子は先輩たちに誘われれば断りにくいだろうし、多少体調が悪くても無理するじゃない。私だって萌夏ちゃんが調子悪そうなのは知っていたし、一次会で連れて帰ってあげるべきだったと後悔しているわ」
「そんなあ」

社会人である以上体調管理は自己責任。萌夏自身が帰ると言えばそれで済む話だった。

「すみません」
「いいのよ。私は、いいんだけれどね」

私はいいのってことは・・・
「やっぱり高野さんたちが?」

「うん」
礼さんの困った顔。
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