その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

彼女は俺がC健に異動した年の夏に中途採用で入所してきた。
事務をしていた女性が2人一気に退所してしまい、慌てて部長が募集をかけた次の日に応募してきたのが彼女、中原朱音だった。

実は辞めた事務の女性2人とも1度ずつ関係を持っていて、それが原因で彼女達は仲違いをし、互いに気まずくなった為辞めると本人から恨みがましく聞かされた。

俺からしたら『バカバカしい』の一言に尽きる。

所内でどんな噂になっているのか、周りからどう思われているのかは知らないが、別に特段女好きというわけではない。

営業という仕事柄、人当たりのいい態度はもはや職業病で、会社では本音を隠した上っ面の会話しかした記憶がない。

それは女性に対しても同じことで、寄って来られれば断るのも面倒なので『1度だけ。恋人にはならない』という割り切れる子だけを相手にしてきた。単なる性欲処理。

中には同じ職場内で誘ってくるツワモノもいて、ちょっとしたスリルを味わうのもいいかと軽い気持ちで手を出したこともある。

それが今回2人一気に辞める原因になったわけだが、俺としては最初に割り切った関係を望んでいると明言していたはずなので、当人同士のいざこざは無関係だと主張したい。

誰かを特別扱いしたことは1度もないし、こういう諍いが面倒で同じ女は2度と抱かないと決めているのに、それでも問題が起こるのならやはり職場で安易に手を出すのはやめるべきかと思っていた。


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