その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~

秋の繁忙期を目の前に辞めた無責任な2人に代わって入ってきたのは、小柄だがキリッとした意志の強そうな女性だった。

入所当時は営業と事務ということで全く接点はなかったが、くるくるフロア内を動き回る彼女はよく目に入ってきた。

所内の業務に慣れてくる頃には秋の繁忙期がやってきて大変だっただろうに、楽しそうに働く彼女に目を奪われることが多くなった。

そんな彼女、朱音ちゃんとの初対面はなんとも形容し難い、いわゆる「やっちまった」という最悪なものだった。

前からずっと誘われていた3階の外来にいる看護師についに捕まり、地下にある資料室へ連れ込まれた。

聞けば旦那と上手くいっていないらしく、スリルのあるセックスで思いっきりストレス発散がしたいという。
そこらへんの男だと後々面倒になりそうだが、俺なら後腐れがなさそうだという何とも分かりやすい理由だった。

毎度お馴染みの『1度だけ。恋人にはならない』というセリフを一応人妻である彼女にも伝え、了承を得た上で据え膳を頂いていた時、内鍵を閉め忘れたらしく入ってきてしまったのが朱音ちゃんだった。

さすがに所内の事務の女性に見られたのはまずいと思ったのか、名も知らぬ看護師はそそくさと身なりを整えると出ていってしまった。きっともう誘われることはないだろう。

そして入ってきたのが彼女だと分かった瞬間、俺はとんでもないことを口走った。


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