その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
『君が代わりに続きシてくれる?』
我ながら最低だと思う。
他の女を抱こうとしていた直後に、こうして彼女に声をかけるだなんて。
『……はい?』
『俺は君なら大歓迎だけど』
なぜ誘うような事を言ってしまったのか。
自慢じゃないが、これまで自分から女を誘ったことなんかない。口説いたこともない。
なのになぜか彼女をこの場から立ち去らせてしまうのが惜しくて、そんな事を口走ってしまった。
しかし彼女から返ってきた返事は『仕事したいので出て行ってくれますか?』という辛辣なものだった。
すぐに応じてくれると思っていたわけではないが、頬を染めたり何かしらアクションがあると自惚れていた俺は、朱音ちゃんの心の底から軽蔑したような冷たい視線に心底驚いた。
最低な男だとレッテルを貼った以降の彼女は、俺に対し歯に衣着せぬ物言いで接してくる。それが新鮮で、何かと声を掛けては邪険に扱われるのを繰り返してきた。
どれだけ冷たくあしらっても懲りずに構ってくる俺に辟易しながらも、なんだかんだ会話してくれる朱音ちゃんが可笑しくて可愛い。
さらに彼女が『そうだ!DTにしよう!』というとんでもない標語をひとり口にした際も居合わせてしまい、上っ面だけで接している他の同僚にはない親しみを感じて、今まで以上に彼女から目が離せなくなった。