その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
それにしても…彼女の恋人の条件が童貞とは。
端から俺みたいな男は嫌いだと態度で示されていたものの、いざ対象外だと明言されると急速に心が冷えていくような感覚に陥った。
そんな自分の戸惑いを押し隠すように茶化しながら、その真意を探ろうとして何度か理由をつけて一緒にランチを食べても、朱音ちゃんは面倒くさそうな顔をして何も教えてはくれなかった。
しかしひと月前、俺たちの最悪の初対面を交わした資料室へ向かう朱音ちゃんを追いかけ、無理矢理ファイル整理を手伝ったのを理由に一緒にランチに行った日。
彼女が『Dの男』を探すのは、独占欲や嫉妬心を感じたくないからだという理由を引き出すことが出来た。
美味しそうににこにこデザートを食べる朱音ちゃんが可愛くて、自分の分のケーキも彼女に差し出す。
女性にそんなことをしたのは初めてだったけど、その時はただ嬉しそうな彼女を見ていたい一心だった。
そんな彼女の心が強く囚われるという独占欲や嫉妬心。
俺はそういうものをいまだかつて感じたことがないため、なぜそこまで相手に感情移入出来るのかがわからなかった。
それを聞いてみたくてじっと彼女を見つめていると『フォンダンショコラってエロいよなって言い出したらフォークで刺しますよ?』という中学生みたいな下ネタを言ってくる朱音ちゃんに思わずコーヒーを噴き出してしまった。
相変わらず彼女の中の俺は『エロいことしか頭にない最低野郎』というレッテルが瞬間接着剤のように強力に貼り付いているらしい。
自業自得だとは思うものの、軽蔑しきった目で見られるのはいくら慣れてもやはり切ない。