その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
目の前の男を睨みつけるように見つめようと、彼の視線は俺ではなく後ろの彼女にしか向いていない。
まるで俺の存在などないかのように2人で見つめ合っているのに苛立ちが抑えきれないでいた。
そんな中、いち早く我に返ったのは、今一番辛い思いをしているであろう朱音ちゃんだった。
「中央健診センターの中原です。本日はよろしくお願いします」
無表情という仮面を付けた朱音ちゃんが硬い声で挨拶をすると、さすがに仕事を思い出したのか佐藤は俺たちを応接スペースに案内した。
さすがインテリアデザインの会社なだけあって、社内のフロアも一般の会社と違っている。
各部署を仕切る衝立もなく、大きく曲線を描いたデスクにカラフルなチェア。
観葉植物が至るところに置かれていて、フロアの端にはグリーンのラグと同色のハンモックが吊るされている。
応接スペースだけは小さな個室になっていて、木目調のドアを開けて中に通された。
真っ赤な革張りのソファに座り、持ってきた資料を見せながら健診の流れを説明していく。
その際、確認しておくようお願いしてあったビル内で使用できる部屋の一覧を見ながら、どの健診をどの部屋でしていくかを詰めていく。
このビルに詳しい朱音ちゃんがいることで、通常の打ち合わせよりも早く流れを決められた。
検診車の駐車スペースだけはまだ確定出来ないということだったので、こちらの要望だけ伝えて折り返し返答をもらうことにした。