その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
粗方打ち合わせも終わり、俺としてはさっさとここから朱音ちゃんを連れ出したい。
出されたアイスコーヒーに手を付けることなく資料を片付けていると、カツカツと耳触りなヒールの音が響き、ノックもなく応接室のドアが開けられた。
何事かとそちらを見ると、不躾に入ってきたのは、今にもヒステリックに叫びだしそうな形相の女。
朱音ちゃんの姿を見つけると「何しに来たの?!」と大声を出した。
一体何なんだ。応接室にいるんだから仕事に決まってるだろう。
俺と同様扉に目を向けていた朱音ちゃんは、彼女を見ると辛そうに目を伏せた。
何がなんだかわからないが、目の前の佐藤がオロオロして全く役に立たない。なぜ客が来ている時に乱入してきた人間を追い出さないのか理解出来なかった。
「失礼ですが、あなたは?」
「彼の婚約者です」
打ち合わせの邪魔をするなというニュアンスを含めたつもりが、一切仕事とは関係ない受け答えにほとほと呆れる。社員なのかどうかもわからない。
一体なんなんだ、この女は。
「今更戻ってきて何のつもり?!」
そんな俺の胸中なんかお構いなしに捲し立てる。