その男『D』につき~初恋は独占欲を拗らせる~
「ようやく別れて会社も辞めたと思ったのに。また彼に付き纏い始めたの?!」
ヒートアップする女に何も言えずただオロオロするだけの佐藤。
女の発言とここに来てからの一連の流れで、朱音ちゃんがこの職場からどういう経緯で追いやられたのかを理解した。
「…あの」
一方的にただ詰られていた彼女がようやく口を開いた。
「私は御社を担当するわけではないので、2度とこちらには参りません」
ただキーキー叫んでいるだけの女の方を見ることなく、視線を伏せたままキッパリとそう告げる。
その言葉を聞いた佐藤があからさまにほっとした表情になったのを、俺は見逃さなかった。
先程から燻っていた怒りが限界を突破した。
「そうですね、我々はもう2度と御社に来ることは無いでしょう」
『我々』と一括りにしたことに引っかかりを覚えた佐藤が「え?」と疑念を持って俺を見る。
それを歯牙にもかけず言葉を続けた。
「申し訳ありませんが、この契約は解除させていただきます」
「友藤さん?!」
驚き真っ先に声を上げた隣の朱音ちゃんに大丈夫だと頷く。