冷徹ドクターに捨てられたはずが、赤ちゃんごと溺愛抱擁されています
「そのときにはもうわたしも和也くんも悠翔の父親の見当はついてたから、どうするか考えたの。でもふたりのことだから黙っておいた方がいいって和也くんに言われたんだけど、わたし我慢ができなくてね」

 早口でまくし立てる姉。きっと色々な思いが渦巻いて、暴走してしまったのだろう。

「思わず、瑠衣に子供がいること言っちゃった」

 わたしが怒ると思ったのか、姉は小さく縮こまっている。

 もちろんわたしはそんな姉を怒ることなんてできない。

「お姉ちゃん、ずっと言えなかったわたしが悪いんだから、そんなに謝らないで。それにお姉ちゃんのおかげなの。こんな風に三人で一緒にいられるのは」

 ひとりで産み育てると決めた。けれど三人で一緒にいることを夢見なかったわけではない。当時はないものねだりだと思い諦めていた現実が、今ここにある。

 まだ完全な形ではないにしろ、これらからゆっくりと三人の形を作っていくと決めたのだ。

 そのきっかけを作ってくれた姉に、感謝こそすれ怒るなんてことはない。

「そう言ってもらえてよかった。それにわたし……相手が君島先生じゃなかったら教えなかった。悠翔のこと」

 姉の目が真剣なものに変わる。

「瑠衣と君島先生ふたりのことを知ってるから、きっとなにか事情があったんだと思って。すれ違いで離ればなれになるなんて、寂しすぎるから」

 わたしのことを深く思ってくれていることに、胸が痛いほど締め付けられた。こういう姉のまっすぐなところにずっと憧れていたことを思い出す。

「お姉ちゃん、本当にありがとう。わたしお姉ちゃんの妹で本当によかった」

 目頭が熱くて、涙がにじんだ。そんなわたしを見て、姉もまた泣き出しそうだ。一歩近付いた姉がわたしをゆっくりと抱きしめてくれた。


 
「いただきます」

 姉が手を合わせると、悠翔が隣で「ます!」と手を合わせる。その様子を見て大人四人が顔を緩ませた。

 ローテーブルに料理を並べて食べはじめる。

「ほら、悠翔」

 翔平がサラダのミニトマトとブロッコリー、それにチーズをお皿にのせて悠翔に手渡すと、フォークを使って上手に食べる。

「悠翔くん、上手だね」

 姉に褒められてにこにこしている。

「瑠璃ちゃんもそう思う? それに野菜食べられて偉いな、悠翔」

 隣では翔平もまた姉と同じように、褒めて頭を撫でている。

 そんな彼の様子を見て驚いていたのは和也さんだ。
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