君がすべてを忘れても、この恋だけは消えないように
 その言い方が本当に「いいよ」という感じだったので、私は安堵してしまった。

 そしてモンブランと苺タルトの両方を私たちは味わった。


「おいしい……! 両方とも」

「そうだね~。やっぱりこうやって半分こにして、正解だったっしょ?」


 得意げに笑って樹くんが言う。

 本当に正解だったなあと私は思う。

 ――数時間前までまともに話したこともなかった男の子と、カフェでケーキをシェアしている。

 よく考えるとなかなかあり得ない事態だ。

 でもケーキはおいしいし、他の人に感じるような緊張感はほとんどないし。

 ……何より楽しかった。


「あー。やっとこのカフェに来られた~」


 ケーキを食べ終わった後、コーヒーをすすりながら樹くんがしみじみと言った。

 その言い方が、「ずっと来たかったところにやっと来られた」みたいな言い方に聞こえて、私は不思議に思った。


「そんなにここに来たかったの?」

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