小説「グレイなる一族」
子供達「ちきしょー父さん母さんを返せ!!」

子供らが、亡き両親が手にしていた武器を自分達が手にすると、私に勢い良く向かっ
てきた。私は、その剣を振り払う事だけに懸命に努めたのだが、やがてその情景を見かねた部下が・・

部下「・・貴様らアラン将軍に何て事を・・死ね!!」

アラン「やめろ!!」

部下の剣は、子供達を切り裂いてしまった。私は、無骨者の戦士であるがゆえにまだ幼い子供達を救うことも出来なかったのである。思えば「バルト国」の将軍に任命されて以来、数多の命を私の剣は奪ってきた・・命を奪えば奪われた者は憎悪とかし復讐に燃え
憎しみの連鎖は尽きる事なく広がってゆく・・今目の前で奪われた幼い二人の命のように・・

部下「アラン将軍・・大丈夫ですか?相手が子供だからと言って殺るのためらっちゃ
いけませんぞ。」

アラン「・・ああ。」

私は、今まで数々の戦場において敵を全て倒す事が最高の正義だと思っていたのだが・・
この二人の命が奪われる情景が心に染み込んでくると私の今までの数々武功はただ
憎しみの連鎖を広げてしまっただけのように思えて、頭の中は割れそうだった。

私は、部下達を先に引き上げさせると馬を降り、さっき散っていた二人の子供達の亡骸
をいつまでも覗き込んでいた。いつのまにか朱色の夕日は戦場の朱色に全て同調し、私の瞳から奪ってしまった命への後悔が溢れでるようになった。

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