小説「グレイなる一族」
エピソード弐十2 「グレイなる誘導」
エピソード弐十2 「グレイなる誘導」

I am GALY・・
私の名は、グレイ

私は、「グレイランド」で「セバスチャン」と二人きりの身の上をあんじる誇り高き高貴ないきものである。

あーあ水飲みたい・・しかし「グランマ」がこの国に不在の今となっては、「グレイ語」の使えない「セバスチャン」との意思疎通を何とか図らねばならない身である。「グレイ山脈」の方に目を向けると「セバスチャン」もこちらの方を伺っている。多分また、私の右頬か左頬を狙っているのだ。私は何とか「セバスチャン」と目を合わせないように首を旋回させると、一計を練ってみた・・

「セバスチャン」の考えはもう大体想像ついている。
私と目が合った瞬間こちらに向かってくるはずだ。私はいますごく「一番絞り水」が
飲みたくて仕方ない・・まさに彼と私の思案のずれた此処は一歩間違えれば戦場なのだ。
ここまでお互いの思案がまったく違う方向にずれているとある意味火曜サスペンス的展開が予想されるのだ。

ここは思い切って彼と目を合わせてみてみるか?
彼がこちらに向かうのと同時に私は洗面所に猛ダッシュを駆ければいいのだ。
しかし果たしてそんな単純な事で鈍感な彼に私の喉の渇きを察してもらえるだろうか?

「セバスチャン」が相手ではこちらも二重三重も罠を仕掛けて目的に向かって、
立ち向かわなければならい・・そうしないといつだって一方通行の車線を走っているよう
なものだ。ここはわざと彼の足元まで近づいてみて甘え甘えを行って物欲しいそうに
訴えみようかしら・・もしかしたら一発でこの思い伝わるかも知れない・・「グランマ」不在の今彼だって、普段よりは私に注意を向けているはずだ・・しかし、「セバスチャン」やっぱり「セバスチャン」なのである。油断できない・・


そうこうしている内に「セバスチャン」の方から私に向かって来た。
私は選択の余地無くプランAの思案によって、洗面所に猛ダッシュをしてみた。

が・・・

彼は洗面所の一歩手前のトイレに入ってしまったではないか?このトイレの扉は
私の背丈くらいの高さにちょうど風通しの窓がついていて
中の様子が伺えるのだ・・中を覗いてみると・・

「セバスチャン」は頑張っていた。


< 39 / 211 >

この作品をシェア

pagetop