私があなたを殺してあげる
 私も服着て髪を整えると、男が待つ玄関へと向かった。

「じゃあこれ、タクシー代」

 男はそういって三万円を私の前に差し出した。
 これにはセックス代も含まれているのだろう。

「すいません、ありがとうございます」

「ううん、こちらこそ。とってもよかったよ」と、男はそう言ってニコリと笑みを浮かべると、「また近々誘っていい?」と、言葉を続けた。

「あっ、はい・・・」

「ホント? よかった。じゃあまた、店にも行くから」

「はい、お待ちしております」

 私たちはそう言って部屋を出て、ホテルの前で別れた。


 煌びやかに輝くネオン街を一人で歩く。どうしようもない背徳感に、ものすごい勢いで虚しさが加わる。

「セックスは、キスは、うれしいもののはず・・・」

 私は右手の人差し指で唇に触れる。


 やはり先程の男とのセックスは、気持ちは良かったが何とも思わない。もう一度したいかと聞かれれば、どっちでもない。

「私、なんでこんなことしたんだろう・・・」

 私は今日、初めて彼氏でもない、好きでもない男性とセックスをした。


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