悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
レオの魔術によって私の体は淡い金色の光に包まれる。
「どうだ?」
光が消えたのと同時にレオはまた魔術を使って大きな鏡を私の前に出現させ、私に最終確認をする。
「完璧よ、レオ」
鏡に映る私はまさに私がイメージした通りの姿になっていたので私は満足げにレオにそう答えた。
さすが我が国きっての魔術師だ。
魔術を使わせればレオの右に出るものはいないだろう。例えこの私でも。
「そうか」
口数も少ないし、無愛想だが、魔術を使っている時、その魔術を褒められた時、レオはほんの少しだけ嬉しそうな目をする。
私はそれが大好きだった。
なかなか懐かない猫が少しだけ心を開いてくれたような感覚と同じである。
「最後に口紅を塗りなさい」
「…ああ」
私に笑顔でそう命令されるとレオは私の前に跪き、魔術で自分の右手に口紅を出現させた。
そしてそれを慣れた手つきで私の唇に乗せる。
「できたぞ」
「そう。色を確かめたいわ」
口紅を塗り終わったレオが少し熱っぽい視線を向けてきたので私はお決まりの言葉を笑顔で口にした。
「…」
するとレオは無言で私の唇にキスを落とした。
私がレオに口紅を塗ってもらう時はいつもこうやってキスをさせてレオの形の良い唇に色を移させている。