悪女は恋人たちを手放した。恋人たちはそれを許さなかった。
ルークに愛を囁かれながらの朝食を終えた私は先程ルークと共に座っていたソファで1人寛いでいた。
帰り際にいつもの調子で「エマの側にまだ居たい」と涙目で訴えてきたルークだったが、ルークの役目はもう終わったのでさっさと解放してあげた。
去り際までしっかり私に愛を囁けるルークは偽りの愛囁きテストがあったら満点を獲得できるだろう。
コンコンッと強めにノックされた音が部屋に響く。この強めのノックはレオだろう。レオも私の恋人だ。
この時間的に身だしなみ係でもしに来たのだろうか。
「入るぞ」
返事をしようとした時にはもう遅くガチャッと勢いよく扉が開かれた。
そして扉を開けた人物がコツコツと足音を鳴らしてこちらにやって来る。
「おはよう、エマ」
「おはよう、レオ」
私の目の前に現れた涼しげな目元をした美青年、レオはにっこりとも笑わず私に挨拶をしたので私は正反対ににっこりと笑って挨拶をした。
レオの容姿は闇夜を思わせる紫がかった癖のない黒髪で、瞳の色は印象的な真紅。涼しげな目元が少々冷たそうな印象を与えるが、美しい顔立ちをしている美青年だ。
年齢は私と同じである。
レオはリアムやルークのように愛想はよくない。
「今日はどうする?」
「そうね。化粧はいつも通りで髪はふわふわに巻いて欲しいわ。口紅はレオの瞳と同じ色を。レオが塗ってね」
「わかった」
レオに無表情のまま尋ねられたので、私は今日の身だしなみのオーダーをレオに伝える。するとレオは簡潔に返事をすると右手を私にかざした。