逆行令嬢は元婚約者の素顔を知る
生地は上等なものを使っているのだろうが、デザインが残念でならない。俺の婚約者ならば尚のこと、ヴァージル公爵家の総力を挙げて、この世で一番美しいドレスを着せたい。
「ジュード、どうした? あまりにも可愛くて見とれてしまったかな?」
なかなか発言をしない息子に、父上がからかうように言う。
それがいけなかった。
焦った俺は、早く何か言わなければと頭の中がぐるぐるして、気づけば暴言を吐いていた。しかもすっかり板についた皮肉な笑みとともに。
「なんだ、この似合っていないドレスは。もっとマシなデザインがあっただろうに」
違う。そうじゃない。一体何を言っているんだ、俺は。
まずは謝罪だ。君を愚弄するつもりは一切ない。そのことを真摯に伝え、彼女の許しを得なくては。そして改めて、彼女の美しさを褒め称えるのだ。
彼女の婚約者として恥じない男に生まれ変わらねば、彼女の横に立つ資格はない。
そのとき、唐突にあることに気がついた。
(ちょっと待て。彼女が俺の婚約者? だめだ、今は心の準備ができていない。せめて婚約はこの動悸が治まってから……とにかく今はまだ早い!)
葛藤する自分の心を落ち着かせるため、ふっと軽く息を吐く。
彼女はこんなにも美しく可憐な花なのです。いきなり婚約を結ぶよりも、まずはもっと互いの仲を深めることが先でしょう、と父上に進言するつもりだった。
「ジュード、どうした? あまりにも可愛くて見とれてしまったかな?」
なかなか発言をしない息子に、父上がからかうように言う。
それがいけなかった。
焦った俺は、早く何か言わなければと頭の中がぐるぐるして、気づけば暴言を吐いていた。しかもすっかり板についた皮肉な笑みとともに。
「なんだ、この似合っていないドレスは。もっとマシなデザインがあっただろうに」
違う。そうじゃない。一体何を言っているんだ、俺は。
まずは謝罪だ。君を愚弄するつもりは一切ない。そのことを真摯に伝え、彼女の許しを得なくては。そして改めて、彼女の美しさを褒め称えるのだ。
彼女の婚約者として恥じない男に生まれ変わらねば、彼女の横に立つ資格はない。
そのとき、唐突にあることに気がついた。
(ちょっと待て。彼女が俺の婚約者? だめだ、今は心の準備ができていない。せめて婚約はこの動悸が治まってから……とにかく今はまだ早い!)
葛藤する自分の心を落ち着かせるため、ふっと軽く息を吐く。
彼女はこんなにも美しく可憐な花なのです。いきなり婚約を結ぶよりも、まずはもっと互いの仲を深めることが先でしょう、と父上に進言するつもりだった。