天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「いや、わかっていたらどんな可能性も排除すべきではない。しかもお前は忘れたのではなく気づいていたのに準備を怠った。医療従事者失格だ。俺たちは命を預かっているんだ。肝に銘じておけ」


 陽貴さんの低い怒号が私にも届き、胸が痛くなった。

 私はあのとき……。考えられるだけの万全の準備を整えたはずだったのに足りなかった。
 ううん、不足していた器具なんてなかった。
 輸血も十分確保してあったし……。足りなかったのは私の技術だ。

 あの医療ミスの光景が鮮明によみがえってきて気持ちが揺さぶられ、息が苦しくなる。


「季帆」


 動けないでいると、階段から出てきた陽貴さんに見つかってしまい、腕を引っ張られて近くの倉庫に連れ込まれた。


「聞いてたのか?」
「ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったんです」


 ふたりの会話にくぎ付けになってしまった。
< 116 / 373 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop