天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
「恵(めぐみ)さんは八階です」


 もしかしたら奥さんを捜しているのかもしれないと思い当たった私は付け足した。

 リハビリに行く前、鈴木さんが『めぐり』と連発していて、そのときは天野さんも私も意味がわからなかったが、そういえば奥さんの名前が〝恵〟だったと思い出したのだ。

 うまく意思の疎通ができず互いにイライラしていても、一番信頼できる人に違いない。

 正解だったのか、鈴木さんはキョロキョロし始めた。


「天野さんが連れていってくれます」


 天野さんを前に立たせて伝えると、小さくうなずいた。


「よかった。香月さん、ありがとう」
「いえいえ」


 安堵の表情を浮かべる天野さんは、鈴木さんと一緒に戻っていく。

 一緒に飲みに行ってから、彼女は先輩ナースにも私にも積極的に質問をしたり頼ったりするようになっている。


「なんの騒ぎかと思ったら、香月じゃん」
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