天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 どうしたの?


「季帆」


 やがて彼は私の手を強く握り、低いうめき声をあげて果てた。


「ごめん、つらくなかった?」


 呼吸が整わない彼は、私を抱き寄せ耳元でささやく。


「大丈夫」


 荒々しくはあったが、私が嫌がるようなことは決してしなかったし、私の反応も気にしてくれた。
 とはいえ、いつもとは違う様子が引っかかる。


「陽貴さん、どうかしたの?」

「俺……時々自分がしていることが正しいのかわからなくなるんだ。そんなときはとてつもなく不安で、押しつぶされそうになって……」


 命を救えても重度の後遺症でその後の人生に絶望する患者さんもいる。

 陽貴さんだって人間だ。
 いっそ死なせてほしかったと泣かれたら、いたたまれないに違いない。

 そんなジレンマと毎日のように対峙しているんだ、きっと。


「陽貴さんは正しいよ。なにも間違えてない」
「季帆」


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