天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 とすれば、視力以外の機能も失われる恐れがあるのだ。

 そんな親友の手術を私なら引き受ける勇気はない。


「簡単に言うな」

「バカだな。倉田の能力を認めてるんだぞ、俺は」


 木藤先生は真剣そのもの。
 一方陽貴さんはしばらく微動だにせず悩み続けていた。

 しかし、ふぅと小さなため息をついたかと思うと表情が優しくなる。


「負けたよ。俺がやる」


 陽貴さんが覚悟を決めた瞬間、木藤先生の顔に喜びが広がった。


「頼んだ」

「その代わり、うちの病院で再検査だ。ほんのわずかでもリスクを減らしてから執刀したい」

「主治医の仰せの通りに」


 うなずいた木藤先生は、次に私に視線を送った。


「奥さん、器械出しやってくれない?」
「私が?」


 意外すぎる申し出に、頭が真っ白になる。


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