天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 彼が仕事に集中できるように、病院ではできる限り事務仕事を引き受けて、家では穏やかに過ごせるように気を配って……と考えながら、木藤先生の『器械出しやってくれない?』という言葉がリフレインする。


 今さら復帰なんてできるはずもない。
 またあんな事態に遭遇したらと怖くてたまらない。

 でも、執刀医が陽貴さんなら……横柄で無責任な近藤先生とは対極にいる彼のサポートならできる? 

 ううん、ブランクがあるのだから無理。


 激しく気持ちが揺れ動く。

 しかしなぜかいてもたってもいられない気持ちになり、寝室のクローゼットから読み込みすぎてボロボロになっている専門書を取り出して目を通し始めた。



 木藤先生はそれからすぐに検査入院が決まった。

 入院手続きはもちろん私の仕事。そのときに初めて私より少し年上の小柄な奥さまと、ガキ大将という息子さんに対面した。


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