天才脳外科医は新妻に激しい独占欲を放ちたい
 あれは直前に、『命を救う義務がある』と陽貴さんにたしなめられたからだ。

 あれで、看護師としての本能のようなものにスイッチが入った。


「それでは、私たちはこれで」
「本当にありがとうございました」


 山内先生とあいさつを交わしてから私たちは救急を離れた。

 看護師さんに空いている処置室を借りて着替えを済ませた陽貴さんとともに病院を出た頃には、もうお昼をとっくに回っていた。


 タクシーに乗り込み、早速口を開く。


「お疲れさまでした。あの男性はもう大丈夫?」
「うん、問題ない。季帆がいて心強かった」


 ずっと彼の介助をするのが目標だったが、まさか新婚旅行でそれが実現するとは思わなかった。


「緊張して……」
「そんなふうには見えなかったなぁ。ギャスピングの判断は早いし、挿管のときの動作も一切無駄がなかった。時間との勝負だから本当に助かったよ」


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