【完】セカンドマリッジライフ
「武蔵ー、今日の晩御飯はカレーですよぉー。愛情たっぷりなの!あ、でも武蔵は犬だからカレーは食べれないっか。キャハハッ!」
近頃雪乃は進んでキッチンに立つようになった。 ピンクのエプロンをして足元では武蔵がじゃれつく。
実に楽しそうに料理をしている。 俺が作る方が数倍早いし効率も良い物だが、こうやって待っている時間も悪くはない。
「利久さんお腹空いちゃったでしょう?もう少し待っててね!めっちゃ美味しいカレー作るし!」
「あ、ああ。ゆっくりで構わない。包丁で指を切らないようにな…」
「あはは、分かってますよぉーだッ」
うちに来た時からいつだって明るくって笑顔を絶やさない子だった。 その彼女の持つ強烈で華やかな明るさに惹かれたものだ。
けれどそれと同時に怖いし儚いとも思っていた所だ。
底抜けに明るい人間も中にはいる。 朝の太陽のように眩しい笑顔。 そこにほんの僅かに落とされた陰。 雪乃はもしかしたら泣きたい時も笑っていなくちゃいけない人生だったのかもしれない。