【完】セカンドマリッジライフ

身長が高めなわりにはガリガリであったので、モデル時代には拒食症やら吐いていると噂を立てられた。勿論事実無根だ。

それでも何もしなかったニート時代一年間は食べるのが面倒臭くなって、ロクな食生活をしていなかった。 すると40キロを切りそうになったので、さすがに焦って無理やりにでも食べるように心掛けた。

「うふふ~、本当に美味しい」

「そして毎日毎日何が楽しいのかさっぱり分からんな」

利久さんは初め私の笑顔を’嘘くさい’と言った。
大袈裟に喜んで、すぐに感動を露わにしてしまう所も’胡散臭い’と未だに言われる。

ここは自分でもよく分からない。 決して嘘をついているわけではないし、嬉しかったり感動している気持ちは本物なのに、昔から嘘くさいやら胡散臭いは結構言われた。

けれども’秋月 雪乃’だった頃の自分が無意識に染みついているのも事実だ。 私は昔からとても人目を気にするタイプの人間だった。 周りに嫌な気持ちを与えるのも嫌だったし、不機嫌になって周囲を困らせるのも嫌だった。

知らず知らずに自分自身にプレッシャーをかけていた。 私はもう’秋月 雪乃’ではない。 ’加賀美 雪乃’だ。無理に笑ったり周りの目を気にする必要はない。

だけど自然と嬉しくて笑みがこみあげてしまうのは、想像以上に利久さんや犬猫たち。 そしてみどり動物病院での生活が楽しかったからだと思う。

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