【完】セカンドマリッジライフ

「そんな恰好じゃあ、風邪ひいちまう。 どこからやって来たの?あの時間なら東京かい?」

信号で止まる前に、スケートリンクのように車のタイヤが滑った。 それでもギリギリ止まれるのは、この土地に慣れているせいだろう。

私も車の免許は持っているが、この道をすいすいと走れる自信はない。

「これ舐めな」と言って、タクシーの運転手はレモン味ののど飴をくれた。  …何か、暖かい。東京ではあまり遭遇しない出来事だ。 おじさんから貰ったのど飴を口に含むと、甘くて温かい味がした。

「そう、東京から来たんです。」

「やっぱり!東京の女の子は今時で可愛いね。 お嬢ちゃんもすっごくスタイルが良くて芸能人かと思っちまった。」

「アハハ!おじさん口が巧いなあー。」

’お嬢ちゃん’と呼ばれるのは子供扱いされたようで、どこか擽ったい。 私はもう23歳になる立派な大人なのだ。

’芸能人’というワードに一瞬どきりとしてしまったけれど、ゆっくりとサングラスを外して車内の窓から外を見つめる。


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