御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
「ルーティンか……普段の日の朝は、コーヒーを飲むだとかシャワーを浴びるだとかそれくらいだけど、仕事がない日はよく洗車してる。特に予定がない日は、洗車しながらなにするか考えてる」
「へぇ……車、好きなんですね」
「ああ。でも、車っていうよりは、今乗ってる車が好きなだけだから、何台も所有したいだとかそういう欲はないけどな」
そう言って笑った顔は、それまでとは違い、少し幼く見えた。
大事なものを語る表情に混ざる少年っぽさに、なんだか嬉しくなって自然と頬が緩む。
「大事にされてるんですね」
「まぁ、そこはせっかく気に入って買ったんだし、手に入れた以上は大事にする」
東堂さんは、東堂プロダクツの御曹司だ。
車なんて買おうと思えば好きなものを買えるし、高級車を数台所有するのだって難しくないと思う。
それでも、一台の車を大切に乗っているところにとても好感を持つ。
穏やかに微笑んだ横顔にただ見入っていると、不意に東堂さんがこちらを見るから肩が跳ねてしまった。
「今度、俺の車でどこか行くか。ひなた、車酔いは?」
そう聞かれ、首を振る。
「いえ。乗り物酔いはしたことないので大丈夫です」
「じゃあ、決まりだな」
柔らかく微笑まれたら、断りの言葉なんて出てくるはずもない。
部屋に招けば好みのお土産を持ってきてくれて、次の約束もスマートにしてくれる。
手料理をおいしいと完食してくれるし、会話だってしていて楽しいし、私の話もしっかり聞いてくれる。
どうしてこんな人が私に構ってくれるのだろう、と今さらながら不思議になるのは、私が東堂さんのいいところを、一緒に過ごした時間のなかで知ったからだろうか。
そんなことを考えたら聞かずにはいられなくなり口を開く。