御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「でも、東堂さんは私の嫌がるようなことはしないと思いましたし、実際にしませんでした。それでも、今後は部屋に招くのは控えた方がいいですか?」

じっと見上げて聞いた私に、東堂さんは困ったように眉を下げて笑う。

「それは俺が今、男を敬遠してきたひなたの信用を、どうやっても得ようとしているところだからだ。そのためならひとり暮らしの部屋に招かれてどんなに無防備な姿を見せられても手は出さない。……まぁ、俺も男だし限度はあるけどな」

楽しかったから、また機会を設けたいと思った。もっと、東堂さんを知りたいとも。
けれど、そんな風に言われてしまうと、ただ楽しかったからという理由で簡単に次回を約束するのもどうかと思い、赤くなった頬を隠すようにうつむくと、東堂さんが言う。

「今のところは俺以外の男をしっかり警戒してくれればそれでいい。飯、うまかった。近いうちにまた呼んでくれるか?」

その言葉に勢いよく顔を上げると、微笑んだ東堂さんがいた。

「はい。もちろんです」
「じゃあ、また連絡する」

最後、もう一度私の頭をくしゃりと撫でて離れていく手。
パタンと玄関ドアが閉まっても、しらばらく余韻から抜け出せずその場に立ち尽くしていた。



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