御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


十六時を回ったところで、お開きとなった。
すぐに終わったお見合いの時間を取り戻すようにたくさん話せて、とても満足だったしなにより楽しかった。

男性慣れしていない私がそう思えるのだから、東堂さんが気を遣ってくれたのかもしれない。

玄関先、靴を履き終えた東堂さんが私を振り返る。
玄関とフローリング部分には十五センチほどの段差があるのに、まだ東堂さんの方が背が高かった。

なにかもの言いたげな顔をしているように見え、「どうかしましたか?」と聞くと、東堂さんは少し考えたあとで言う。

「ひなたが恋愛に積極的になろうとしているのは、話してくれたから知ってる。でも、密室にふたりきりなんて、何をされてもおかしくないし、部屋に上げられた時点でなにをしてもOKだととる男も少なくない。だから、今日みたいに簡単に男を部屋に上げない方がいい。……いや、上げないで欲しいっていう方が正しいな」

東堂さんは自嘲するような苦笑いを浮かべて私に手を伸ばす。

「だから、部屋に上げるのは、そうなってもいいと思う相手だけにしておけ」

頭を優しく撫でながらの言葉は、まるで子供に言い聞かすような穏やかなトーンだった。

密室にふたりきりがどういう危険を持つのか、私だってまったく知らないわけではない。
でも、相手は東堂さんだ。
お見合いで知り合っている以上、お互いの素性も知れているし、そこまで警戒しなければいけない相手だとは思えなかった。

それに、レストランで過ごした時間を思えば、ひどいことをする人だとも思えなかった。
東堂さんの人間性を今まで過ごしたわずかな時間で判断するのは早計かもしれないけれど、それでも部屋に招くという行為を危惧する考えは私には浮かばなかった。

< 44 / 184 >

この作品をシェア

pagetop