御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「ごめんごめん、そうよね。春野ちゃんは初恋自体まだで、だから判断材料としてスタンプ押すことにしたんだもんね。……うん。たしかに大人になってから初恋をするってなると子供の頃みたいに簡単にはいかないかも」

うんうん、と先輩がうなずいていると、渡さんも同じように首を縦に振る。

「俺なんか当たり前に誰かを好きになって、あ、やべ、これ恋だ、とか思うけど、そういう自覚って子供の頃からの経験の積み重ねで判断してるもんなぁ。そもそもさ、恋した先になにが待っているのかもわからない状態って、ちょっとした恐怖もあるし、スタンプとかで明確にしておかないと踏み出せない可能性はわかるかも」

私を見て「女子は特に怖いよな」と、渡さんに気を遣ったように微笑まれ、そういうものなのかと思う。

恋をした先……恋人同士になったあとに何が待っているのか考えてみる。
つまり、手を繋いだりキスしたり……触れ合ったり、ということなんだろうけれど、少女漫画すら通ってこなかった私にとっては、キスもその先もいまいちピンとこない。

話には聞いたことがあるし、ドラマでも何度か見た。
でも、実際にそこに自分を当てはめて考えたことはなかったため、現実味がない。

それが特別な行為だとはわかっているし、母からもそういうことは好きな相手としかしちゃダメだと小さい頃から言われてきた。

だから余計に、だろうか。
好きな相手がいなかった私には無縁の話だと切り捨ててきてしまったため、恋愛方面の話題に疎すぎる。


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