能力を失った聖女は用済みですか?
ハシムと出会った集落から、次の集落までは、大体1時間くらいかかった。
しかしこれは、飛んで行ったからであって、地上を歩けばその何倍もかかるはず。
もし、ディアーハが空を飛べる聖獣じゃなかったらと考えて、私は青ざめた。

それから、また次の集落を目指し進むと、途中で一番星が天空に現れた。

「もうすぐ日が暮れるな」

「そうね。真っ暗になる前に着くかな?」

「わからんが……お?ルナ、あれがそうか?」

ディアーハは鼻先で、遥か前方を指した。
そこには、細かい火が転々と、丸い円を書くように並んでいる。
あんなに煌々と火を炊くのは、何者かが滞在しているのに間違いない。
それはきっと補給部隊だ。

「たぶんそうね。暗くなる前には追いついたけど……すぐに会ってくれるかしら?」

「シャンバラの王か?うーん、そう簡単に会えるとは思えないぜ。お前どう見ても、普通の村娘だからな」

服を着替えたことで、目立たなくなった。
だけどその代わり、神秘性はゼロ。
シャンバラの衣装に馴染みすぎて、その辺の集落に紛れていても気付かれないレベルだ。

「と、とにかく、集落に侵入しやすくはなったわ!中の様子を窺うのには打ってつけよね!」

「モノはいいようだな」

「うるさいわね。さぁ、近くに降りて。早速行動を開始するわよ」

ディアーハは、やれやれといった感じで下降し、集落近くの小高くなった丘に舞い降りた。

「じゃあ、気を付けてな。助けがいるなら呼べ」

「うん、わかった!」
< 11 / 204 >

この作品をシェア

pagetop