能力を失った聖女は用済みですか?
「だから心配しなくていい。ラピッドだかラビットだか知らないが、そいつにルナは渡さない。家族を渡すことなど出来ないだろ?」

「カイエン様……」

一転して微笑むカイエンに、私の胸は不思議と安心感で満たされた。
……そ、そうだよね、きっと私の存在って、家族の延長線上にあるもので、愛だの恋だのと桃色な関係じゃない。
王妃だとしても姉的なポジションで、大した意味はないかも知れない。
王様なんて妃を何人も持てるし、その中の一人が、姉ポジだったとしても何も問題はない……のかな?

「さて、そうと決まればルナの衣装を仕立てなければな。今の服も似合っているが、王妃の威厳を出すならばそれなりのモノを用意しなくては」

悶々と考えを巡らせる私をよそに、カイエンは粛々と話を進めていく。
新しく衣装を仕立てるって言ったけど、高価な服を着ても私に威厳なんか少しも生まれないと思う。
ロランの聖女の衣装なんて「動きにくいなぁ」と文句を溜めつつ五年耐えた。
それに比べて、シャンバラの村娘の服は動きやすくて、肌馴染みが良い。
村娘サイコー!村娘バンザーイ!と叫びたいくらいである。
と言う訳で、衣装なんて結構ですと反論しようとした私をカイエンが自信なさげに覗き込んだ。

「思えば、シャンバラはルナに救われたようなものなのに、何のお礼も出来てないだろ?」

「いえ、お礼なんて……」

口を挟もうとする私をカイエンは制した。

「しかし、だ。お礼をしようにも、オレはお前が喜ぶものがわからない……せめて新しい衣装でもと考えたんだが、間違っていただろうか?」

「そっ!?そ、そんなことは……ないです……」

カイエンの目はすがる子犬のようにウルウルしていた。
いつも自信たっぷりな王の、違う一面を見てしまった私は、かなり狼狽えて咄嗟に反論を忘れてしまっていた。
そして、まぁいいか……なんて、思ってしまっている。
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