能力を失った聖女は用済みですか?
会ってみたいと思う反面、嫉妬に似た感情が呼び起こされるのはどうしてなのか。
わからないまま、私はカイエンの話を聞いた。

「シスルから聞いていたんだったか?オレの子供の頃の話は……」

「はい、少しだけ」

「そうか。なら姉がオレにとってどんな存在かは知っているよな」

姉であり、母であり。
内乱の起こったシャンバラから逃げてきたカイエンを匿った女性。
私はカイエンに頷いて見せた。

「歳の離れた姉で名前はサラディナーサと言うんだ。外見は大人しそうなんだが、中身は……大胆で向こう見ず。アッサラームの兄上がいつもハラハラしっぱなしでな。オレもいつも泣かされていた」

カイエンは頬を緩めたけど、私は驚きの余り目を見開いた。
……聞いていた話とだいぶ違いますけど……?
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