能力を失った聖女は用済みですか?
何かもっとお手軽で、良い土が出来る肥は……。
鳥小屋から目を逸らせて物色すると、あるものを見て突然閃いた。

「馬っ!馬ですよ、カイエン様っ!」

「馬?馬がなんだ?」

「馬の糞を混ぜて耕しましょう」

すると、カイエンが眉間にシワを寄せた。

「シャンバラでは堆肥に鳥や牛の糞を使うのだ。馬は初めて聞く」

「あら、勿体ない!一番いい堆肥になるのに!」

「……そうなのか!ふむ……なら話は早いな。補給部隊の馬の糞ならいくらでも使える」

「では、ラグンには馬の堆肥でイモを植えましょう!」

私が意気込んで言うと、カイエンが非常に楽しそうに笑った。

「何で笑うんです?何か面白いこと、ありました?」

「いや、普通の女は堆肥の話でそんなにいい顔しないと思ってな」

「あ……」

私は低くつぶやいた。
堆肥の話を楽しそうにする女なんて確かに稀である。
しかも王様相手に、だ。

「すみません。カイエン様に話すべきことじゃなかったですよね?気を付けます」

「はぁ?謝るなよ!気をつける必要はない!むしろ、オレは感動しているんだ!」

「……馬の堆肥に、ですか?」

「……まぁ、それもあるが……周りにこんな話を出来る女はいないからな、それが嬉しいんだよ」

屈託なく笑うカイエンの笑顔に、私は釘付けになった。
そしてその瞬間、シャンバラの若き王は「人たらし」である、と確信した。
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