能力を失った聖女は用済みですか?
「カイエン様、女性を泣かせるなんて、十年早いですよ?」

背後から突然声がした。
……シスルだ。
でも、涙顔を見せたくないので私は振り向けない。

「泣かせてない。これは……あ、そうだ。シスル」

「はい」

「ここより先、ルナはオレの馬で行く。いいな?」

「別に構いませんが……どうして急に……」

シスルはいきなり黙り込む。
奇妙な間を不審に思っていると、突然気味の悪い含み笑いが聞こえてきた。

「ふ、ふふっ……はいはい。そうですか。どうぞご自由に」

「ああ、そうするさ。では、これより一刻の後、出発だ。あと二つの集落を回った後、レグラザードへと向かう!」

カイエンの命令に、シスルが「はっ!」と返し、すかさず部隊へと号令をかける。
その間に涙を拭き、準備を整えた私にカイエンが言った。

「ルナ、集落の人に先程の堆肥の説明を。後は部隊の奴らを使って堆肥の元を集めさせるといい」

「は、はい!」

そうだ。
泣き言なんてもう言わない。
過ぎたことを悔やんでもどうにもならないのだから。
大切なのは、これからのシャンバラを助けること。
私は改めて決意をし、集落の人の集まる集会所へと歩いて行った。
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