能力を失った聖女は用済みですか?
補給部隊は集落内に馬を止め、私とカイエンは住民に話を聞いた。
ラグンの長によると、苗を植えた翌日に蔓が繁り、まさかと思って掘ってみると巨大イモが大豊作。
調理をすると、甘くほっこりしていて集落全員がお腹いっぱいになったという。
そして、やはり、イモは毎日実っていた。

「これは苗に原因があるとしか思えませんね」

開墾地の土の状態を確かめながら言った。
前に来た時と、状態はそんなに変わらない。

「アッサラームからもらった種芋が特別だったのだろうか?」

「そうかもしれません……乾いた土地がその種芋とうまく噛み合ったのか……または……」

シータの言うところの「おイモの精霊」の仕業か。
目に見えないものを信じないシャンバラの人達に、これは理解しがたいことだ。
でも、子供達や王宮の人は奇跡のような出来事を目の当たりにし、おイモの精霊の存在を信じ始めている。
それが、冗談であっても冷やかしであっても、声に出して感謝すれば精霊は聞いている。
調子に乗って、力を発揮したりもするのだ。

「これなら、他の集落も大豊作かもしれない。食料が確保されれば、集落での暮らしも良くなるな!」

「そうですね!あ、でも沢山出来てしまうので、保存方法と保存調理の仕方だけは伝えておきましょうね」

「うん。そうしてくれ!ルナがシャンバラに来てくれて本当に助かる。ありがとう」

カイエンの笑顔が炸裂する。
……この王様のスマイルはいくらだろう。
人の心くらい簡単に買えそうな気がする……。

「いえ。そんな。私の方こそ、楽しく過ごさせてもらってますから」

「それなら良かった。これからもずっといてくれよ?シャンバラには永住権とか面倒臭いものはないから」

おどけていうカイエンを見ながら、私も釣られて笑った。
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