能力を失った聖女は用済みですか?
ラグンの人達に保存用イモレシピを伝え、お土産に持ってきたルナシータを渡すと、私達は次の集落へと向かった。

カイエンと出会った場所。
まだ記憶に新しいキドニー集落の開墾地も、ラグンと同じく緑の蔓に覆われていた。
私達が着いた時は、まさに集落の人総出でイモ掘りが行われている真っ最中。
それはもう、一大イベントのようで、熱気に溢れていた。

「おーい!お前達!大豊作か!?」

カイエンは馬上から降りずに叫ぶ。
すると、子供達がカイエンを見つけ我先にと駆けつけた。

「カイエン様っ!おイモがいーっぱい実ったよ!すごいんだよ?もうね、もうね、食べきれないくらいっ!」

子供の一人が言った。
その子は、あの日、キドニー集落でカイエンと一緒にかくれんぼをしていた子供。
彼を見つけた男の子である。

「そうか、サリュー!それは良かった。たぶんこれからもイモは実るからな。安心して腹一杯食べろよ?」

「本当!?わぁーい!あっ、でもね。採れ過ぎちゃって倉庫がいっぱいで、皆困ってるんだ。どうしたらいい、カイエン様?」

「心配ない。オレ達が今から新しい倉庫を作ってやる。それに……」

カイエンはサッと馬を降り、私を下ろすと続けて言った。

「このルナが美味しく食べられる調理法を教えてくれるからな!」

「えっ!今より美味しくなるの!お姉さん、すごいんだね?」

サリューと子供達は、キラキラした目で私を見る。
こういう期待が込められた目に弱いんだよねぇ、私。
力以上のものを出したくなっちゃって。
ルナねぇさん、張り切っちゃうぞ?
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